半径2kmの循環から、世界を変えよう

世田谷パン祭りは毎年、多くの方にご参加いただき、パンだけでなくフードやドリンクの提供もあって、大変な賑わいをみせます。その一方で、イベントでは多くのごみが出てしまうのも事実です。世田谷パン祭りでは、ボランティアスタッフの皆さんの尽力により、毎年できる限りの分別を行い、資源化を進めてきました。
今年もごみ回収の際には分別を徹底し、資源循環を進めていきます。そこでご協力いただくのがLFCコンポスト。「コンポスト」という、生ごみを堆肥に変える資源化の活動を推進しています。LFCコンポストの開発・普及を行うローカルフードサイクリング株式会社・東京事務局の土屋奈央さんにお話を伺いました。
コンポストとは?
世田谷パン祭り(以下、パ)_まずコンポストについて教えてください。
ローカルフードサイクリング(以下、ロ)_ コンポストとは、生ごみや落ち葉などの有機物を微生物の力で分解し「堆肥」を作る行為や、その容器のことを指します。分解するための形は様々ありますが、LFCコンポストは、専用バッグの中に基材という堆肥のベースになる材料を入れて、そこに日々の生ごみを投入していきます。
1日に約400g程度の生ごみを入れ、かき混ぜながら分解を促進。約2ヶ月入れることができ、そこから3週間ほど熟成させると堆肥が完成します。完成した堆肥は、畑や庭にまいたり、プランターで野菜や花を育てるのに使えます。
パ_生ごみが土に還るんですね。
ロ_生ごみが堆肥となって土に混ざることで、土壌が栄養豊かに改善されるんです。コンポストはちょっとした手間やコツが必要ですが、LFCコンポストはできるだけ手軽に続けられるよう工夫しています。初心者でも失敗しにくく、利用者同士のコミュニティもあるので、安心して始められます。
パ_コンポストを通じて、土と触れるだけでなく、人とのつながりも生まれるんですね。
ロ_ LFCでは、特に庭のない都市部の集合住宅でも手軽に始められることを重視しています。仲間を増やしていくことで、より多くの人に「捨てない暮らし」を届けたいと考えています。
ごみから資源へ
パ_ごみ処理には、さまざまな課題がありますね。
ロ_生ごみは水分が多く、焼却時に大きな負荷がかかります。資源化を進めることは、処理設備や環境への負担、そして行政の財政的な負担も減らすことにもつながります。
ただ、LFCの原点は、ごみをどう処理するかももちろんですが、大切にしているのは、「どうすれば安心・安全で豊かな食を得られるか」という問いです。
食品残渣としての生ごみが堆肥となり、堆肥が野菜を育て、その野菜を食べる。この循環(=ローカルフードサイクリング)は、無理のない自然なサイクルです。日々の暮らしの中で、健康にも、社会にも、環境にも貢献できる仕組みだと考えています。

世田谷に新たな拠点
パ_世田谷パン祭りの会場のひとつでもあるHOME/WORK VILLAGEに拠点を構えられた経緯を教えてください。
ロ_もともと福岡で創業し、現在も拠点としていますが、関東にもLFCコンポストの利用者が増えたため必要性を感じていました。そんな時この施設と出会い、開業に合わせて入居できたんです。元学校という背景もあり、広場や庭、屋上菜園など環境として魅力的でしたし、何より「みんなで課題に向き合い、解決していく」という施設のコンセプトにも強く共感しました。今では施設のテナントの方々もコンポストを実践してくださったり、自然と交流が生まれています。
また世田谷区はLFCコンポストの利用者が特に多い地域なので、近くでサポートや情報交換ができるのも大きなメリットです。
パ_世田谷は農地も多いですし、コンポストの普及にも大きな可能性がありそうですね。
サーキュラーステーション
パ_今回、世田谷パン祭りでは「サーキュラーステーション」の運営をご一緒いただきます。例年のごみステーションを今年からはサーキュラーステーションと呼ぶことにして、資源循環をより意識した取り組みにしていきます。
ロ_ はい。会場で出たごみを持ち込んでいただき、できる限り資源として再利用できるよう分別を行います。そのうち生ごみは、わたしたちのコンポストを使って堆肥化し、HOME/WORK VILLAGEの菜園等で作物を育てる予定です。地域の中で資源が循環する流れをつくりたいと思っています。
パ_ 地域のお祭りで出たごみが地域内で循環するというのは素敵ですね。
ロ_わたしたちは「半径2kmの循環」を掲げています。人の生活圏って、だいたい自分の足で歩けるそのくらいの範囲ですよね。身近な範囲から循環を考え、実践していく、それがローカルフードサイクリングの考え方です。一人ひとりが、生ごみを“出さない”という意識を持つだけでも、世界はきっと変わっていくと思います。